ハートに火をつけて

もう7月だというのに、まだ肌寒い夜がありますね。妄想も吹き飛ぶくらい寒かったりします(笑)

巷にあるSMバー(サロン?)というのに行ってみました。料金もリーズナブルだし

入門用にはいいのではないかな?という考えからでした。

まぁ初めての体験なので緊張感がだんだん大きくなり、コインパーキングのチケットが

震える手で中々つかめません。次に手を伸ばして掴めなかったら引き返そうと思いましたが

そう思った瞬間に奇跡的にチケットを掴むことが出来、無事に駐車完了です。

お店の住所はご案内いただいておりましたのでスマホのナビに住所を入力。

これがまた震える指で(笑)。

思うように動かないスマホ。歩きながらの操作でパーキングの柱に頭を激突。

無人のパーキングタワーに鳴り響くスマホのアラーム音。もう頭を両手で抱えてしまい

心の中でオーマイガッ!と叫びました。

緊張感からなのか、興奮しすぎなのか、街なかを歩いている最中にすれ違う女性は全て女王様に見えてしまい

同じ方向に歩いていようものなら、これから行くお店の女王様なのではないか?と勝手な妄想まで。

やっとの思いでお店の建物の前に到着。まだ引き返せる。そう思ったのですが体が勝手に動きノックしてしまいました。

まぁノックするまで15分くらい迷っていましたが(汗)

ドアが開き中に案内されるとボンテージの出で立ちで眩しすぎるくらい美しい嬢が800人。

私服?普通の格好の女性が1名いらっしゃいました。

SMバーなので女王様なのかM女さんなのか区別がつきませんが私には全員女王様に見えました。

予想外な事に普通の格好をしている女性が私に近づき、

「初めての方ですね?こちらにご記入をお願いします。」

カルテと書かれたアンケートのようなものを渡されました。

「な、名前?書くのですか??」

「せ、性癖?私はまだMなのかSなのか解らなくて。」

Mなのかと先にMと言っている時点で何だが見透かされたような笑顔を向けられました。

あ、そうそう。名前はあだ名で良いそうなので住んでいる土地にでもしたら自分でも親しみのあるあだ名になるかな?

と思い、書こうとしましたが思いとどまりました。私は多分Mだと思うので王子とは書けませんでした。

もし、このお店で、お仕えできる女王様に巡り合えたなら、そのあだ名だと奴隷の王子になってしまうからです。

そのくらいの事を弁えるデリカシーは私にはありました。

アンケートを書き終えて、笑顔の素晴らしい女性に渡すと、私が2体写り込んでいるつぶらな瞳で私を見つめ、

「お飲み物は?」

「あ、じゃ、じゃあモルトはありますか?モルツじゃなくてモルト。」

ちょっとした笑いを取ろうとしましたが、軽くニコっとされて、モルトがロックで目の前にすっと出されました。

私は職業柄コミュニケーションが苦手です。営業職を20年続けているので、あまり人と会話しません。

ひとけのない公園や、スーパーの駐車場を探すのは得意なのですが。

そして目の前に出されたグラス。もう緊張で喉はカラカラ。すぐにでも飲み干しそうな勢いでしたが私は思いとどまりました。

そう。私はここまで車で来たのです。

じゃあ何故?謎です。緊張感がなせる妙技だったのでしょう。

こうしてグラスを見つめながらカウンターで葛藤をしていると、ボンテージの美しい女性が近寄ってきました。

30代くらいでしょうか。女盛りの肉体は身に着けているエナメルの光沢で怪しい色香を放っています。

「あそびましょうか。」

そう一言にフロアに連れ出され、服をはぎ取られ、四つんばえにさせられ、バラ鞭を振り下ろします。

ビシッ!ビシッ!背中は赤みを帯び、熱を持ち、鼓動が背中で感じられるほどです。

ひとしきりの無理が終わると仰向けに寝かされ、膝を立てるように言われ女王様がお腹にドカッと座り休憩です。

なるほど、膝は女王様の背もたれになるのです。

「折角だから私の匂いを覚えていきなさい。」

そう言うとヒールを放り投げ、顔面に足の裏を押し付けます。

濃密ないやらしい香りが鼻孔にこれでもかと侵入してきます。

失礼な事にゲホッと咽てしまうと、

「あらら、じゃあこっちの匂いはどうかな?」

怪しい笑顔で覗き込むと立ち上がり、くるっと反転。そのまま顔にドカッと座りました。

今度はあの独特な尻臭が鼻孔に溢れます。もう目がとろんとして彷徨の表情です。

「お口じゃなくて、お鼻でクンクンするのよ~」

女王様も楽しそうです。

そんな幸せそうな男を私はカウンターでじっと見つめていました。私の隣に座っていた男は本当に幸せ者です。

私があまりにも羨ましそうにその光景を見ていたからなのか、火のついた蝋燭を持ちながら

別の美しい女性が私の所に近寄ってきました。

「あそびましょうか。」

目の前に蝋燭が煌々と灯っているのに、私はゾクッと寒気がしました。

車のエアコンが効きすぎたようです。私は我に返るとカーエアコンのスイッチを切りました。

この時期はエアコンの調整が難しいですね。つければ寒いし、消せば暑いし。

まぁ運転しながらの妄想は危ないのでほどほどにしたいと思います。